トレンドブログってご存知ですか?
例えば、煽り運転で誰かが捕まったって話題になった時に、容疑者を検索すると、
〇〇(名前) 顔画像を特定!動機やFacebookは?〇〇で逮捕!
というようなタイトルが検索に滝のように表示されたのを目にしたことがあるかもしれません。
これがいわゆるトレンドブログというものです。
このトレンドブログって実は法律的にアウトというケースもあるのです!!
現役の弁護士である私が解説しますね。
トレンドブログがなんのために作られるのか知らない人や、トレンドブログを運営している人にとっても役立つことを書いていきます。
トレンドブログとは
トレンドブログというものは現在流行になっているテーマいわゆる時事ネタを取り上げた記事を中心としたブログのことです。
なぜそのようなサイトを個人で運営するのかというと、主にアフィリエイト収入を目的に作成されるのです。
現在は個人で作成したメディアであっても、グーグルアドセンスなど広告画像をクリックされるだけで収益が発生する仕組みがあり、アクセスを集めれば集めるほど、クリックされる回数が増えることから、比較的簡単にアクセスを集めることができるトレンドブログが作成されているのです。
トレンドブログを作成するメリット
ではなぜトレンドブログはアクセスを集めやすいのでしょうか。
これははっきり言うと SEO 対策として非常にしやすいからです。
SEOって聞いたことありますよね。
いわゆる検索エンジン最適化のことで、狙ったキーワードを上位表示をさせる対策のことを言います。
こちらは、グーグル社がそのアルゴリズムを公開していないため、正解はないのですが、一般的には、滞在時間や被リンクの数、書いた人の信頼性(いわゆる権威性)など、総合評価で決まると言われております。
ただ、確実な答えはグーグルの一部の人しか知らないという噂です。
それでも、ひとつ言えることは SEOは相対評価であるということです。
つまりどんな検索ワードでも必ず順位がつくのです。
トレンドブログが SEO 対策上有利と言われる理由は、できるだけ早く情報を上げることによってライバルが少ないということが一番の理由になります。
トレンドとなっている以上検索回数が多い反面、この検索ワードについて書かれている記事が少ないので、できるだけ早くライバルが存在しないうちに記事を書けば多くのアクセスを集められる可能性があるということになります。
そのため、個人の名誉やプライバシーを侵害するような質の低い記事が量産されるという事態が起こっているわけです。
ちなみに、先日赤髪社長というツイッター界で話題のインフルエンザーがDMを晒されプチ炎上し、僕がそのことについて素早く記事を上げたところ、「赤髪社長 炎上」というキーワードで無事1ページ目に表示させることができました。
これは、トレンドブログの記事を作成するにあたって、ある意味実験的な試みでもありました。
おかげで、キーワード流入が本ブログでもありました。
問題となりそうな法律
1プライバシー権の侵害
よく個人の名前をタイトルにつけ 、Facebook のアカウント判明などと記事にしているケースが散見されます。
こちらについてはプライバシーの侵害になる可能性はあります。
ただいいくら質の低い記事とはいえども憲法21条によって表現の自由が保障されております。
憲法21条
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
なので、有名人でない一私人だとしても直ちにプライバシー侵害とはなり得ないのです。
裁判所ではプライバシー権の定義を大体下記のようなものとしております。
- 私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られること
- 一般人を基準にすると公開がされたくないこと
- 一般の人々にまだ知られていないこと
例えばフェイスブックアカウントなどは、ネット上に公開されているわけですから、一般の人々にまだ知られていないとは言えないでしょうが、自宅を特定!などとやると未だ知られていない、公開されたくない情報といえ、プライバシーに該当するのは間違いなさそうです。
また、表現の自由とのバランスを、プライバシーが公開されることによる権利侵害の度合いとそれによって得られる利益の比較によって違法性を判断している傾向にあります。
得られる利益って何かというと、それを知ることによって、読んだ人が有益な情報と感じられるかどうかということです。
たとえば、性犯罪者の実名を知ることにより、今後の生活を安心しておくれるようになるなどです。
彼女の好きな食べ物はぜひとも知りたいよ!先輩!
なので、今後トレンドブログ作成しようと考えている方も、あまりに過剰にプライバシーを晒すようなことは避けた方が無難です。
2名誉毀損
事実を摘示して、その人の社会的な評価を低下させた場合は名誉毀損になります。
「事実の摘示」って聞き慣れない言葉かもしれませんが、批評批判でなく具体的な事実を示すことです。
たとえば、「〇〇は不倫している」と事実かどうかを確認できるものが事実の摘示で、「〇〇は貞操観念が低い」というのは人によって評価が分かれるので、批評批判と言えます。
そして、摘示した事実がその人の評価を下げるものであれば名誉毀損となるのです。
プライバシー侵害の場合は民事上の責任しか負いませんが、名誉毀損は刑事上の責任も負うことがあります。
なお、民事と刑事の違いはこちらの動画を参考にしてください。
名誉毀損は刑法230条に規定されております。
刑法230条
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
名誉の毀損とは、その人の社会的な評価を低下させることを言います。
では、なぜ、トレンドブログが放置されているのかというと、このような規定があるためです。
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- 第230条の2
- 前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
- 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
- 前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
簡単に言うと、有用な記事であれば罰せられないということになります。
有用っていうのは、プライバシー侵害のところで解説したようなこととほぼ同じ基準と思っておいて良いでしょう。
ただ、デマの情報を安易に信じた場合は、罰せられます。
- また、これまで名誉毀損になった事例も紹介しておきます。
3著作権の侵害
記事の中で勝手に画像を拝借して使用しているケースが散見されます。
こちらについてはその写真の著作権者の権利を侵害している可能性が高いです。
ただ全ての写真が著作物と言えるかと言うとそんなことはありません。
著作物とは法律上以下のように規定されております。
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
このように、創作物と言えるかどうかが大きな問題と言えます。
例えば写真の構図であったりとか、光の当て方、シャッタースピードなど組み合わせによって作品といえるものであれば、著作物となり単なる自撮り写真であれば著作物とは言い難いでしょう。
別にプロカメラマンが撮ったものでなくても、著作物にはなりえます。
そして、著作権を所有しているのは、写っている本人ではなくて、撮影者です。
もちろん、その写真がたとえ著作物ではないと言っても、他人が撮った写真を勝手に使用するということは、倫理的にも疑問に感じるところがあるので使用しないほうがいいのは間違いないでしょう。
4肖像権の侵害
裁判所の中でも特に法律の解釈について判断をする最高裁判所で明確に肖像権と言う権利が存在するとした判断はありませんが、京都府学連事件において下記のように述べております。
個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されない自由を有するものというべきである。これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、警察官が、正当な理由もないのに、(以下略)
そして、その判断の要素として概ね裁判所はプライバシー権と同様に両者の権利の比較でその違法性を判断しているようです。
このように人の顔をやたら晒すようなことは、それをする意義や有用性など低いような場合は違法と判断される可能性はありますので十分に注意してください。
5パブリシティ権の侵害
パブリシティ権という権利があります。
ピンクレディ事件においてこのように述べられております。
個人は、人格権に由来する権利として、その氏名、肖像等をみだりに利用されない権利を有し、肖像等が、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合、かかる顧客吸引力を排他的に利用する権利たる「パブリシティ権」も、上記の人格権に由来する権利に含まれる
上記で、「顧客吸引力を有する場合」と限定していることから、パブリシティ権は一般私人で問題になることはほとんどありません。
その人の名前や顔写真などを使うことによって、経済的な価値があるような場合に問題となるのです。
例えば、芸能人の不倫記事などを書くような場合です。
このように芸能人に乗っかって、記事を書くような場合 はパブリシティ権の侵害として違法となる可能性があるので充分注意する必要があります。
ただし、こちらもそのことを記事にする有用性があれば大丈夫です。
もちろん週刊誌など芸能人の不倫をネタにその人の私生活の写真などを勝手に雑誌に掲載しているケースが散見されます。
芸能人である以上致し方ないという意見もあるとは思いますが、芸能人であっても人間である以上傷つくこともあります!
肖像権やパブリシティ権侵害として違法となることもあるので、その点は認識しておいてください。
デマを書いた場合はどんな問題があるのか
質の低い動画が増えていくとデマ情報まで記事にしてしまうことがあります。
この場合は、名誉毀損やプライバシー侵害になる可能性があります。
釣りタイトルは違法か
トレンドブログの特徴として、非常にタイトルがセンセーショナルな反面、中身を見るとがっかりといったケースが多いです。
例えば、〇〇を特定しました!などと書いているにもかかわらず、中を読んでみると結局特定がされていなかったりと言うこともままあります。
昔は(今でもあるのですが)東京スポーツという新聞記事がちょうど売店でタイトルの一部しか見えないようにして、非常に興味を引くようにして買ってみると全然がっかりと騙されてきたことがよくありました。
「弁護士藤吉が不倫」ってところが見えていて、購入してみると実際の見出しは「弁護士藤吉が不倫を解説」だったり。。。。
このように公にも行われているので、直ちに違法になることはないですが、それでも読者をガッカリさせるような結果になると、結果的にも SEO にもマイナスになると思いますので、その辺はバランスを取って作成するといいかもしれません。
匿名でブログを作ってもバレるのか?
自分は運営者を記載していないから大丈夫と思われるかもしれません。
しかし、名誉毀損やプライバシー侵害にあたるような場合は、書かれた対象者がサーバやプロバイダに発信者情報の開示をすれば運営者を突き止めることができるのです。
僕自身、年間数十件もの記事の投稿者を弁護士の仕事として行っております。
なので、いくら匿名で運営していたり、また記事を外注したりしている人なども責任を負うので、上記のことに気をつけてトレンドブログを運営するか、そもそも運営をやめるのかよく考えて行うといいでしょう。